フィラリア予防が始まって約2ヶ月が経過し、「遅れちゃったけどこれから予防しようかな」と思っている方、「もうじき寒くなるからフィラリアの予防薬後一回くらいでやめてもいいかなぁ」なんて思っている方のために、フィラリア症予防のためのパンフレットを作成しました。以下に掲載。
「犬糸状虫症=フィラリア症」
この病気は、蚊が感染している犬の血液を吸血する際に蚊の体内にはいり、他の犬の血液を吸血する際にその犬の体内に寄生虫が入ることで感染します。犬の体内に入った寄生虫は脱皮を繰り返しながら成長し、感染後3~4ヶ月を経て心臓付近にたどりつきます。その後感染から6~7ヶ月目には成熟して子虫を産生します。
フィラリア予防薬はこの子虫を駆虫するお薬です。フィラリアは犬の体内に侵入して10日ほどで最初の脱皮をします。この状態の子虫に予防薬(=駆虫薬)がもっとも効果を発揮します。そのため、予防薬(=駆虫薬)の投与は「蚊に血を吸われてしばらくしてから」開始し、「蚊が血を吸わなくなってからしばらくするまで」飲ませる必要があるのです。
蚊が血を吸う前の時期に薬を投与しても、駆虫薬としての効果を発揮することはできません。また、蚊が血を吸わなくなった後に投与しないと、最後の頃に体内に入った子虫はそのまま成長を続け、翌年春までの約半年の間に心臓にたどりついてしまいます。
では、飲ませ始めるのが遅かった場合はどうなるのか。感染してから時間がたちすぎてからの予防薬(=駆虫薬)の投与は、すでにある程度成長してしまった子虫を駆虫することができません。この生き残った子虫はいずれ心臓にたどりついて成虫になります。投与前の検査に使用している検査キットは心臓についている成虫を見つけることはできますがそうではない生き延びている子虫を見つけることはできません。このため、投与前の検査で分かるのは「前の年に感染していないかどうか」です。投与が遅れた期間までに感染してしまっていないかどうかは来年の春になるまで分かりません。
では、飲ませ終わる最後の一回を忘れた場合はどうなるのか。通常札幌の場合最後の一回が10月末~11月はじめになります。この最後の一回は9月はじめ~10月はじめごろに体内に入った子虫を駆除するのが目的です。この最後の一回を飲ませなかった場合、この時期に感染した子虫は体内で成長を続け、翌春までに心臓で成虫になります。最後の駆虫はその後半年間駆虫薬の投与がない時期を迎えるため、非常に重要になります。
フィラリアの成虫は心臓の出口に寄生し、それにより心臓が悪くなり、咳が出たり、運動を嫌ったり、ひどくなると腹水が貯留して最終的には死亡します。また寄生している虫の数が多いと突然虚脱状態に陥りそのまま死亡することがあります。成虫の寿命は5~6年といわれています。
フィラリアに感染した状態でフィラリアの予防薬(=駆虫薬)を投与すると、心臓の出口で死亡した親虫や体内の子虫が一度に死滅し、血管を流れて肺につまり「肺動脈塞栓症」を起こします。これは肺の血管がつまり、突然呼吸ができなくなり死亡するという状態です。そのため、予防薬の投与前には必ず血液検査を行い、親虫が体内にいないことを確認しておく必要があります。予防薬にも種類がいろいろあり、親虫を殺す効果の強いものと弱いものとがあります。
実際にフィラリア感染が認められた場合(=心臓に親虫がいる場合)、フィラリアにより心臓が悪くなるより前に駆虫をする必要があります。駆虫にはいくつかの方法があります。
1.手術による成虫の摘出
全身麻酔をかけ、心臓に絡みついている虫を特殊な器具で吊り出す手術です。特殊な器具が必要です。また全身麻酔が必要です。
成虫の寄生している量が多い場合にはできるだけ早く成虫を駆除する必要があり、手術が選択されます
2.薬による成虫の駆除
成虫を駆除するお薬を投与します。駆除された成虫は血液の中を流れて肺に詰まります。このときに強い副作用が出やすいため、投薬前にその副作用を軽減するようなお薬を用いたり、投与後一ヶ月程度安静にしたりする必要があります。
3.薬による子虫の駆除(成長防止)
予防薬と同じお薬を定期的に投与し、子虫が育たないようにして親虫の寿命を待つ方法です。
親虫の寿命まで時間がかかりますが、強い副作用がおきづらいため、親虫の数が少なくて症状がないときに行われる方法です。通常の予防期間だけではなく一年を通して月一回の投与が必要になります。
フィラリア予防薬の効果はかなり期待できるため、きちんとした予防スケジュールを守ることで防ぐことのできる病気です。感染して症状が出てしまうと治療が難しい病気でもあります。予防注射と比べると「毎月飲ませる」ことを忘れてしまうこともあるかもしれませんが、きちんと予防してあげて欲しい病気です。